【完】恋愛モノポリスト
私のお腹の辺りをガッチリ腕でホールドして、すりすりと犬のように私の髪にじゃれ付く。
それが、愛しくて愛しくて、泣きそうなくらい切なくて。
「りょーたの、ばか」
「うん…俺はバカだよね…ななの事、いっぱい泣かせてる」
後ろからりょーたの切なげな呼吸を感じる。
私は、またその場でわっと泣き出してしまいそうなのをぐっと堪える。
「…っ」
「でもね、留学するって決めた以上…ななを一人で此処に置いてはいけないんだ。こんな中途半端な俺じゃ、…このままじゃ、ななを幸せに出来ないから…」
「…りょーた…」
息も出来ないくらいにぎゅうっと抱き締められて、私は名前を呼ぶのもやっとだった。
何かを覚悟したりょーた。
その覚悟が、とても重いものだと、声のトーンだけで分かる。
それだけ、ずっと傍にいたから。
一緒に生きてきたから。
それくらいの変化は…私にだって分かる、から…。
「だから、もしも…俺が帰って来た時…お互いにまだ好きでいられたら…その時は…」
その後の言葉は、私からのキスで塞ぎ込めた。
りょーたが下した苦渋の決断を、これ以上揺らがせない為に。
これ以上、りょーたに苦しそうな顔をさせない為に…。
この体に、りょーたの全てが刻まれている。
そう、思えば…なんでも出来るような気がした。
どんな逆境にも挫けないでいられるような気がしたんだ。
「ねぇ…りょーた…?もう一つだけ、我侭聞いてくれる?」
「……ん?」
「りょーたからの、…キスが…欲しい…」
そう言って、私は瞳を閉じた。
りょーたは、切なくて甘くてとても深いキスを私に落としてから…。
「愛してるよ…なな…」
と、言ってくれた。
もう、それだけで。
十分だった…。