【完】恋愛モノポリスト

離れる事が不安じゃないなんて、そんな見え透いた嘘はつけない。
現に、俺は怖くてななの手を放すことが出来ずにいる。

それをななは分かっていてくれるのか、自分からも指を絡めて来てくれる。
もう、二度と放したくない温もり。
だけど、もう…明日の朝にはななとは離れ離れになってしまう。


「…りょーた…今日も、夕飯食べてくでしょう?」

「あー…うん…でも…」

「何か用事あるの?」

「や…そうじゃなくって…ななのお母さんに悪いなぁーって。こっちに戻ってきてからずっとだろ?だから…最後の日くらいは自分の家で食べようかなって…」

「そんなの、全然悪くないのに…」

「……まぁ、実を言うと、これ以上思い出作っちゃうと日本出難いっていうか…」

「りょーた…」

「勿論、ななとの思い出はいっぱい作っときたい…でも…ごめん。すげぇ我侭言ってる…」

「ううん。りょーたの気持ち分かるから…じゃあ、お母さんに言って料理だけ作ってもらうから、私がりょーたの家に運ぶよ?それでいい?そしたら二人きりで食べられるし」


最後の夜に、二人きりにもなれる…。
恥ずかしそうに、そう言うななが、あまりにも可愛過ぎて俺は人目も憚らずななの体を抱き締めた。

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