【完】恋愛モノポリスト
駆け巡る様々な想い。
俺は急いで帰り支度をして、家路へと急いだ。
気付けばこれでもかっていうくらい、スピードを上げて走り出していた。
「はっ…はぁっ…はっ…」
冬なのに、こんなに走り込んだら、汗だくにもなるよな、なんてどうでもいい事を思いながらも、頭の中はななのことでいっぱいだった。
出来る事なら、ななの涙を乾かす役目は俺であって欲しい。
それが自惚れでも、なんでもいい。
ななの傷が癒されるなら、俺はなんだってするから。
「せめて、電話にだけでも出て…」
握り締めたスマホに力を込めてぎゅっと瞳を瞑った。
「なな…」
はぁっと息をついてやっと辿り着いたななの家の前。
休みに入ってから、一度も顔を見ていなくて、何をどう話していいか分からなかったけど。
それでも、勇気を出してななの家のインターフォンを鳴らした。
ぴんぽん
軽い音は、小さく響いた。
そうすると、中からパタパタとスリッパの音が聞こえて、ドアを開けてくれたのは、おばさんだった。
「こんばんは。お久し振りです。えっと…」
「あら、凌太くん、ほんとに久し振りねぇ。すっかり男前になっちゃって。なななら、部屋にいるわよ。遠慮なんかしないで、入ってちょうだい?」
「あ、あの…実は、ななにメールしたんですけど…返信来なくて。もしかしたら、怒ってるかもしれないんで…」
流石に、いきなり部屋に入るのはまずいと思って、おばさんに当たり障りのない事情を話すと、
「もー。仕方ないわねぇ、あの子ったら。凌太くんの事凄く気にしてる癖に素直じゃないんだから…ちょっと待っててくれる?」
「あ、はい…」