【完】恋愛モノポリスト
第6章「ワタシの中にある愛念」 side:菜々香
無視できない感情
何事もないまま、年越しを迎え、私の心はなんとも言えないモヤモヤを抱えつつも、浮足立っていた。
今日は、いつもとはまた違って特別な日で。
あと数時間後にはもっと別な自分に生まれ変われる…そう、思ったから。
「ねぇ、お母さん。私、りょーたの所に行って来るね」
それは無意識に出た言葉だった。
毎年欠かさず、二人で近所の小さな神社にお参りに行っていたから。
…彼女さんがいても、そこだけは絶対に譲れないと自分に言い聞かせていたんだ。
でも、そう言った私にお母さんは曇り顔を見せる。
「…なに?なんか、あったの?」
「困ったわねぇ…どうしようかしら…」
「…お母さん?どうしたの?」
全然要領を得ない回答に、業を煮やして語尾を強くすると、お母さんは一つ深い溜息を吐いてから、私の方を見た。
「あのね、なな、よく聞いて?凌太くん、今…日本にいないのよ…」