【完】恋愛モノポリスト
そして、短い冬休みが終わりを告げ、とても寒い始業式の日。
「おはよ。なな。……凄い顔。ねぇ、ちゃんと寝てるの?」
静かに声を掛けて来たのは、綾乃だった。
その後ろで、なんだか申し訳なさそうにしている香坂くん。
「柴谷、すぐに知らせてやれなくて、ごめんな?」
その一言で、二人がりょーたの事を知っているんだと理解した。
「ううん。りょーたが出て行く時、素直になれなかったの、私だから…」
そう自分で言って項垂れてしまう。
しゅん、と俯くと、綾乃は静かな溜息を吐いて、こう言ってくる。
「…なな。やっと自分の本当の気持ちに気付いたんだね?」
「うん…でも…もう、遅いんだよね…」
じわりと、浮かんでしまう涙。
それに対して、慌てたように香坂くんが言葉を続ける。
「いや!あいつ、何時も言ってた。『ななが信じてくれなくても、俺はななが好きだ』って。だから、あいつの事信じてやってくれよ。柴谷なら分かるだろうけど、あいつそう言う所、バカみたいに誠実だろ?」
「う、ん…」
なんとか浮かんだ涙をセーター袖でゴシッと拭って、私は教室へ戻った。