【完】恋愛モノポリスト
今は半ば担がれるようにして香坂くんに運ばれた保健室の真っ白い天井を見上げながら、零れていく涙をシーツに沈めて定まらない呼吸を繰り返した。
「柴谷さん、落ち着いて?それじゃあ過呼吸になってしまうわ…辛いだけだから…」
保健室の先生はそう言うけれど、止める事の出来ない浅い呼吸を吐きながら、私はもう一度薄くなっていく意識の向こうで、りょーたの声を聞いた気がした。
白いというよりも、灰色に近い世界を彷徨い歩く。
何か「大切」なモノを見付けようと、ひたすら足早にあちこち動き回る。
だけど、景色は変わるどころか、どんどん薄暗く色を失くしていって、私はその恐ろしさに胸の辺りをぎゅうっと握り締めた。
こんなにも冷たい世界の中で、聴きたいのは貴方の声。
そして、貴方の詞。
私がいつも聞き流してしまってた、貴方の想い…。
初めて、なの。
誰かの存在をどうしても失くせないものだと思ったのは…。
それが、誰よりも傍にいたりょーただったなんて。
「…りょーた…」
ねぇ、もう。
元には戻れないの?
今からじゃ、もう遅いの?
…このまま、失ってしまうの…?