私と君と。
王子様
〜柊優side〜
俺は飽き飽きとしていた。なんて言ったって、高校入学していきなり女子に囲まれたからだ。
キャー!なんて頭に響く甲高い声を朝から聞かされ、テンション下がらない奴は居ないだろう。
面倒くさくなって、爽やかスマイルで
「もうすぐチャイムもなっちゃうし、早く自分のクラスに行ったほうがいいと思うよ?正直俺も、準備とかしたいから一人にしてくれる方が嬉しいんだけど…」
と述べた。すると、周りにいた女子は頬を赤くさせて去っていった。
やっと一人になれたと思うとはぁ、とため息をつく。
俺は素顔を隠して爽やか王子様を演じていた。
そっちの方が楽だからだ。
「朝から大変だなー、しゅ、う、さ、ま、は」
そんな風に嫌味ったらしく言って来た奴は、中学の頃からの友達、篠原龍斗(しのはらりゅうと)だ。
「るっせぇな。好きでこうなってんじゃねぇっての」
軽く睨んでやる。龍斗は、俺の裏の顔も知っているから、素に戻っちまう。
「羨ましい事で」
「そう言うお前だってイケメンだろーが」
「お前程じゃねーよ」
べしっと軽く頭を叩かれた。
「いってぇな!……つか、お前何でここにいんの?」
「あ?俺もこのクラスなんだよ、悪ぃか?」
それを聞いて、嫌そうな顔をしてみた。
「なんだよその顔は」
「冗談だよ、お前が居てくれて少しは楽だわ」
「そりゃどーも」
そんな会話をしてると、チャイムが鳴った。同時に、担任が入ってくる。皆席に座っていった。
「えー、今から入学式だから、体育館へ移動するように」
担任の自己紹介もなく、いきなり体育館へ移動する事になった。
のんびりとしていると龍斗が来た。
「どした?柊優。早く行こうぜ」
「あぁ、おう」
教室から出ようとすると、ボケっとしてたのが悪かったのか、出るタイミングが重なってしまい、誰かとぶつかってしまった。その衝撃で相手がふらついていたから、咄嗟に腕を引いた。
「わり、大丈夫か?」
そいつを見ると、相手は女子。あぁ、また頬を赤らめてキャーなんて騒いじまうのかな、なんて思った。
でも
「あぁ、ありがとうございます。こっちこそすみませんでした」
相手は表情を変えず、頬を赤くすることなくぺこりと頭を下げて教室から出て行った。
相手の子と一緒に居た女子は、その子の事を「夕」と呼んでいた。
一瞬ボケーとしてしまう。
「柊優?おーい」
「え、なんだよ」
「なんだよじゃねぇよ。どした?ボーとして」
「いや、何もねぇ」
その日から「夕」という女子が頭から離れなくなった。俺に対してあんな反応をしたやつは、彼奴が初めてだったから……。
この時から、俺の心は動き始めていたのかもしれない。