最初で最後の恋
01 ひとめぼれ
新緑の季節。
太陽が照りつけ、青々とした木々が風にそよぐ。
18時を過ぎた今でも外が明るいことに、陽の長さを感じる。
ここ桃山高校のグラウンドでは、夏の引退試合に向けて、各部活動が練習に励んでいた。
中でもサッカー部は強いことでも有名で、今日の練習も多くのギャラリーがその様子を眺めていた。
予選試合に向けて部員同士で練習試合の日々。
終了30秒前。
得点は、同点。
「藤真!」
「おう!」
藤真と呼んだその男は、自分の足元にあったサッカーボールをパスした。
そのボールは藤真と呼ばれたその男に届く。
藤真が蹴ったそれは、足元を離れ弧を描いてゴールへと向かう。
ピーッ
試合終了の合図。
そのボールはキーパーの手をすり抜け、見事ゴール。
同時に大きな歓声が上がった。
「よっしゃー!」
藤真はガッツポーズを決めた。
そこへ仲間たちが駆け寄ってくる。
「さすが藤真!お前ならあそこで決めてくれると思ったんだ!」
「いや、お前のパスが良かったんだよ、ありがとう。」
輪の中心にいるその男は、桜庭藤真(サクラバトウマ)
高校3年生。サッカー部のキャプテンだ。
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