副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
第四話 ただのあなたと私
「だからね、今、副社長の家にいるの」

 この前のお詫びも兼ねてご飯に行こうと誘われた私は、仕事終わりに真希と会社の近くで人気の居酒屋に来ていた。

 そして生ビールのジョッキを持ったままポカンと口を開けて固まっていた彼女の顔は、みるみる内に色めき立っていく。

「ちょっとなにそれ! 全然聞いてないんだけど! なによそのおもしろそうな話ー!!」

 ある程度は予想していたけれど、突然大興奮した様子で机に手をついて立ち上がった彼女を見て、やはり今日は個室にしておいてよかったと改めて思った。

 お互いの家も行き来する仲だし、なにより彼女に隠し事など到底出来る気がしない。

 そう思った私は、副社長にも話して真希にだけは全てを話すことにした。

 彼は『 別に秘密にしなくても、好きにしていい』なんて言っていたけれど、こんなのみんなに知られたらどうなることか……。

 想像しただけで、背中に悪寒が走った。
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