副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「どうしたの?」

「ううん、なにも。ところで明日奈、今日なにか予定ある?」

 私の質問をさらりとかわした彼女は、怪しいまでに満面の笑みを浮かべていた。

 なにも、という顔には見えないような気がするのは、私の思い過ごしだろうか?

「本屋さんにでも寄って帰ろうかなって思ってたぐらいで、特にはないけど……」

 それを聞いた彼女は、深く頷きながら私の肩を二回叩いた。

「じゃあ今日、ご飯食べに行こう! お店は私が予約しておくから」

「……うん、わかった。ありがとう」

 小さく胸の前でガッツポーズを決めた彼女は、「庶民は庶民らしく」と声を弾ませながら、会議室へと向かった。
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