副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「あぁ、なんとなくだけれどその気持ちはわかるような気がする。俺たちはこの広い世界のとても小さな場所で生きているって、自覚させられたような気がした。
 もちろん生きている俺たちは狭いなんて思ってもいないし、それと一緒であの金魚たちもきっと自分たちがとても狭い場所にいるなんて自覚はないんだろうけど」

 写真集を両手で高く上げて天を見つめるように眺める彼は、ふっと薄笑みを浮かべた。

「でも、狭い中で生きていることが不幸というわけではないんですよね。広い場所で多くの人がいるとそれだけ通り過ぎてしまう人も多くなりますし、狭い世界でしか見えてこないこともあります。
 世界から見たら小さな場所でも、そこで生きている生き物たちにとってその場所は小さくなんてありませんから」

 こちらを見つめる温かな視線に気付いて、思わずハッと息を呑む。

 しまった! 私ったら偉そうにベラベラと……。

「す、すみません! 私、あの……」

 頭を下げて狼狽えていると、彼はコテン、と私の膝の上に転がってきた。

 驚いて視線を落とすと、膝の上にはこちらを見つめる彼の顔がある。
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