副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「そんなに警戒しないでよ。俺は別に悪者じゃないから。ったく、あいつのせいですっかり嫌われちゃったな。それより望月さん、お昼ご飯食べた?」

 わざとらしく腕時計を見ている彼は、こちらを見て小首を傾げた。

「まだですけど……。これから副社長にお届けするものがあるので――」

 手に持っていた封筒を強調して立ち去ろうとするけれど、彼は負けじと私の前に立ちはだかる。

 副社長もそうだけれど、この人も背が高いから、ニコニコしていてもそれだけで前に立たれると威圧感は相当のものだ。

「じゃあそれ届けてからでいいから、社食でランチしようよ。待ってるから」

 そう告げた彼は、私の返事も聞かずに背を向ける。呼び止めるけれど、振り返ることなくひらりと手を振りながら行ってしまった。

 ……待ってるって、困ったな。どうして私の周りには、こうも一方的な人が多いのだろう。

 思わず苦い笑みを浮かべるけれど、あとを追うようにすぐにため息が溢れ出した。

 けれどあの人、わざわざ私を探していたのだろうか? 一体なんの話があるのだろう?

 想像するけれどロクな答えは浮かばなくて、私は思わず肩を落とした。

 副社長になんて言おう。そもそも二人は、一体どういう関係なのだろう……?
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