副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「いっただっきまーす」

 ハニーバターチキンカレーを前に上機嫌で手を合わせる彼は、それを一口食べて歓喜の表情を浮かべる。

 私も「いただきます」と一人手を合わせると、遠慮がちに煮魚に手を伸ばした。

 しかし口に入れた瞬間、少し懐かしいような甘めの味付けが広がり、思わず顔が綻ぶ。

「あ、あの……三浦さん、ですよね? 今日お誘いいただいたのは、私になにかお話があるんでしょうか?」

 夢中になりそうな美味しさから目を覚まして箸を置くと、早速本題を切り出した。

 すると彼はスプーンを置いて、すっかりバニラアイスが溶けてしまったクリームソーダをストローで吸い上げていく。

「あぁ、話っていうかね……」

 半分ほど一気に飲んだ彼は、満足気に私に視線を移した。

 一体どんな話なのかと息を呑むと、彼は徐に口を開く。

「千秋が好きになった人って、どんな人なのかな? って話してみたくなって」

 …………んっ?

「えっ? 話って、それですか?」

 予想もしていなかった答えに、思わず目を丸めた私からは間抜けな声が漏れた。
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