副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない

「うん。だってあの千秋が好きになった人だからね。気にもなるよ」

　にっこりとイタズラっ子のような笑みを浮かべる彼。

　身構えていた私は拍子抜けしてしまい、突然の脱力感が全身を襲った。

　……そ、それならそうと、先に言ってくれればいいのに。一体どんな話をされるのかと、ここに来るまで私は生きた心地がしなかった。

　しかし胸を撫で下ろした途端、今度は嫌な予感が私の頭を過ぎる。

「あ、あの……まさかここで副社長のお話をする気じゃないですよね？」

　恐る恐る見上げると、彼は不思議そうにきょとんと目を丸めた。

「そのまさかだよ。だって千秋、もう絶対家に入れてくれないだろうから。普段は君のそばにベッタリくっ付いてるしね」

　彼はなにかを思い出したかのように、腕を組んで眉根を寄せる。

　どちらかと言うと秘書だから私が副社長について回ってるんだけれど、彼にはそんなことはどうでも良いようだ。