副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「あの、三浦さんと副社長って、一体どういうご関係なんですか?」

 私がジトッと見つめると、彼は小さく笑みを零す。

「あれ、聞いてない? 俺とあいつは、幼なじみ。小中高に大学まで一緒だったんだ。きっと千秋のことは、あいつの親より知ってるよ」

 副社長の……幼なじみ?

 目を白黒させる私を見た彼は、愉快そうに再びスプーンを手に取った。

「だから、気になるんだ。今までどんな女の子が言い寄ってきても全く関心を示さなかったあいつが、無茶をしてでも手に入れたいと思った相手がどういう人なのかね」

 その言葉に、思わず胸が大きく高鳴る。

 ……副社長が、そんなことを言ったの?

 気恥ずかしくて、頬には急激に熱が上った。それを見られたくなくて俯くと、彼は「あ」と小さな声を上げる。

 不思議に思い恐る恐る顔を上げると、目の前の彼は苦い笑みを浮かべて私の頭の上を見つめていた。

「おい。なにしてるんだ?」

 ドスの効いた低く歪んだ声がして、その聞き覚えのある声に私は大きく跳ね上がる。

 こ、この声は……。

 緊張で強ばった身体をロボットのように動かして振り返るとそこには――。

 ――眉間の間に深いシワを刻む、副社長の姿があった。
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