副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「よくここがわかったな、副社長」

 三浦さんのわざとらしくからかうような口調に、副社長のシワの溝はさらに深くなる。

 副社長が、どうしてここに!?

 状況が理解出来なくて情けなく口を開けたままの私に視線を移した副社長は、小さく息をつき、スッと目を細めた。

「様子がおかしいから来てみれば、どうして君と三浦が食事してるんだ。まさか、先約って三浦のことか?」

「い、いえ! いや、あの……はい、そうです」

 これ以上なく狼狽えた私を見た副社長は、呆れたように眉を下げて三浦さんを睨み付ける。

「言い訳は聞かないぞ」

「言い訳なんてないよ。お姫様とちょっとお食事したぐらいで、かっこいい王子がそんなに目くじら立てるなよ。それよりよく見てみろよ。普段ここには来ないお前のまさかの登場に、みんなが驚いてるぞ」

 三浦さんの言葉で慌てて当たりを見渡すと、食事をしているほとんどの人が副社長に視線を送っていた。

 特に女性社員は、うっとりと食事の手を止めている者も多い。
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