副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
最終話 君につく甘い嘘
「……とりあえず、飲みな」
トレーを持って現れた真希は、その上の一つのマグカップを私の目の前にある木製のローテーブルの上に置き、もう一つを手に持ったままテーブルを挟んだ反対側に座った。
そして心配そうに顔を顰める彼女は、小さく息をつく。
「ありがとう……。突然ごめんね」
甘い湯気が立ち上るそれを手に取ると、私は啜るように一口飲んだ。
飲み慣れた彼女特製の砂糖が多めのココアは、今の私の身体に驚くほど染み渡り、襲い来る安堵感に思わず再び涙が滲みそうになる。
「まったく、突然死にそうな声で『今から家に行ってもいい?』って電話がかかってきたときはなにかと思ったわよ。……その荷物、副社長と喧嘩でもしたの?」
部屋の入り口に置いたキャリーケースに視線を流した彼女はこちらに視線を戻すと、眉を上げて唇をへの字に結んだ。
私は気持ちを落ち着かせるためにココアをもう一口飲むと、意識しなくてもすぐに鮮明に頭に思い浮かぶ記憶を噛み締めるように睫毛を伏せる。
「……副社長、婚約者がいるんだって」
胸の中から最後の空気を出すように呟くと、彼女は大きく見開いた目を何度も瞬かせた。
トレーを持って現れた真希は、その上の一つのマグカップを私の目の前にある木製のローテーブルの上に置き、もう一つを手に持ったままテーブルを挟んだ反対側に座った。
そして心配そうに顔を顰める彼女は、小さく息をつく。
「ありがとう……。突然ごめんね」
甘い湯気が立ち上るそれを手に取ると、私は啜るように一口飲んだ。
飲み慣れた彼女特製の砂糖が多めのココアは、今の私の身体に驚くほど染み渡り、襲い来る安堵感に思わず再び涙が滲みそうになる。
「まったく、突然死にそうな声で『今から家に行ってもいい?』って電話がかかってきたときはなにかと思ったわよ。……その荷物、副社長と喧嘩でもしたの?」
部屋の入り口に置いたキャリーケースに視線を流した彼女はこちらに視線を戻すと、眉を上げて唇をへの字に結んだ。
私は気持ちを落ち着かせるためにココアをもう一口飲むと、意識しなくてもすぐに鮮明に頭に思い浮かぶ記憶を噛み締めるように睫毛を伏せる。
「……副社長、婚約者がいるんだって」
胸の中から最後の空気を出すように呟くと、彼女は大きく見開いた目を何度も瞬かせた。