副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 すると見慣れた待ち受け画面になった途端、携帯電話は私の手の中で震えだした。

 驚いてビクリと身体を跳ねさせると、ディスプレイには彼の名前と番号が表示されている――。

 それだけで胸が飛ぶように跳ねて、鼓動が身体中を暴れるように早くなった。

 その振動は止まなくて、私はどうすればいいのかと戸惑うけれど、結局なにも出来ずにただそれが終わるのを待つ。

 手の中のそれが大人しくなったのを見てディスプレイを覗き込むと、そこには何件もの不在着信を知らせる通知が出ていた。

 ……副社長が会食に行ってから、まだ二時間ほどしか経ってないのに。

 ずらりと続く通知を滑らせていくと、再び携帯電話が振動し出した。

 あのメモを見て、彼はどう思ったのだろうか?

 再び痛む胸に顔を歪ませていると、手の中の携帯電話がふわりと浮き上がった。

 驚いてそれを辿るように追うと、それは無表情でこちらを見つめる真希の手の中に。
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