副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「真希、ありがとう」

 私がそう言うと、彼女は気恥しそうに眉を下げる。

「なによ、改まって。それより今度三浦さん紹介しなさいよね!」

 バシッと肩を叩かれて、私は小さく笑みを零した。

「そういえば今日、三浦さんとランチしたの。すぐに副社長が来て、なにも話してないけど」

 思い返して呟くと、彼女は再び目を丸めて私を覗き込む。

「えー! そんな素敵な話があったなら呼んでよ! いいなぁ、私もまた三浦さんに会いたい」

「ごめん。急だったから……」

 眉を下げて唇を尖らせる彼女は、はぁーっと色気を含んだため息をついた。

 私と違いいつも恋愛に前向きな彼女だけど、切り替えも早く、ここまで同じ人にこだわるところは初めて見た気がする。

 三浦さんのことは割と本気なんだ。

「あ、こないだ合コンして出会った人なんだけど、会社も近くて趣味も合ってさぁ」

 携帯電話を取り出し、ほら、と写真を見せてくるいつも通りの彼女。

 ……前言撤回かもしれないな。

 けれど彼女のところへ来て良かった。一人でどこかにいたら、きっと頭がこんがらがって、悪い方へ転がっていたかもしれない。
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