副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
第二話 甘くない再会は蜂蜜の香り
「おはよう、明日奈!」
月曜日、いつも通り出社ラッシュで回り続けるビルの回転扉を潜るや否や、好奇心に満ち溢れた目を輝かせる真希がエントランスで私を待ち構えていた。
「おはよう」
一文字ずつ強調しながら眉根を寄せてジロリと見つめ返すけれど、彼女はあっけらかんとした様子で胸元の白いシャツのフリルを揺らしながら駆け寄ってくる。
好奇心に支配された彼女の勢いは凄いなんてもんじゃない。以前、愛妻家だと有名な営業部の部長のゴシップネタまで入手していたときは、もはやその情報収集能力の高さに心底驚かされた。
一体どこからあれだけの情報を入手してくるのか、情報収集は彼女の特技とも言えると思う。
なんなら、ぜひマーケティング部にと推薦したいほどだ。
今日もきっと、私から根掘り葉掘り聞き出すまで家には帰してくれないつもりだろう……。
自分のすぐそばまでやって来ている未来を想像して、思わずげんなりと肩を落とした。