副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「失礼します」
頭を下げて入室した部長に続き、私も丁寧に頭を下げる。
息を飲み、意を決して顔を上げると、五十人ほどが入れるビル内で一番広い部屋には窓から外を眺めている一人の男性の姿があった。
しかしその立ち姿を見て、私は眉根を寄せる。
あれ……?
部長も同じ疑問を抱いているのか、困惑した表情を浮かべる彼はぎこちない動きで部屋の中へと数歩進んだ。
「朝の忙しい時間帯に、すみませんでした」
低い声が、広い部屋に静かに響く。
その声を聞いて、頭に浮かんでいた疑惑が確信に変わった。
……この人、専務じゃない。
黒のスーツを着た、手足が長くすらりとした後ろ姿。綺麗にまとめられた艶やかな黒髪。どう見ても、五十代後半で小太りの専務の後ろ姿ではなかった。
「あ、あの……」
部長が頼りない声を出すと、窓の外を眺めていた男性が徐に振り返る。
「まだ正式にここに籍がないもので、磯貝(いそがい)さんに呼び出してもらったのですが――」
こちらを向いた男性を見て、私の頭と鼓動は一瞬にして動きを止めてしまった。
青天の霹靂。まさにそんな言葉が、ポツリと頭を過ぎる。
頭を下げて入室した部長に続き、私も丁寧に頭を下げる。
息を飲み、意を決して顔を上げると、五十人ほどが入れるビル内で一番広い部屋には窓から外を眺めている一人の男性の姿があった。
しかしその立ち姿を見て、私は眉根を寄せる。
あれ……?
部長も同じ疑問を抱いているのか、困惑した表情を浮かべる彼はぎこちない動きで部屋の中へと数歩進んだ。
「朝の忙しい時間帯に、すみませんでした」
低い声が、広い部屋に静かに響く。
その声を聞いて、頭に浮かんでいた疑惑が確信に変わった。
……この人、専務じゃない。
黒のスーツを着た、手足が長くすらりとした後ろ姿。綺麗にまとめられた艶やかな黒髪。どう見ても、五十代後半で小太りの専務の後ろ姿ではなかった。
「あ、あの……」
部長が頼りない声を出すと、窓の外を眺めていた男性が徐に振り返る。
「まだ正式にここに籍がないもので、磯貝(いそがい)さんに呼び出してもらったのですが――」
こちらを向いた男性を見て、私の頭と鼓動は一瞬にして動きを止めてしまった。
青天の霹靂。まさにそんな言葉が、ポツリと頭を過ぎる。