副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 メイクをすることが嫌いなわけではないのだけれど、昔から童顔で二十六歳になっても未だに高校生に間違えられる私は、しっかりとメイクをすればするほど自分が無理に背伸びをした子供のようになっているような気がしてどこか苦手だった。

 つい先週も、真希の家でお酒を飲むことになったので彼女が好きなワインを買いにスーパーに寄ったら、『高校生がお酒なんて飲んじゃダメよ!』と近くにいたおばさんに怒られてしまった。

 仕事帰りで、スーツ姿だったのだけれど……。

「秘書室、なんかやけに盛り上がってたね」

 彼女も気になったようで、グレーのアイシャドウが映えるクールな奥二重の目をスッと細めた。

 昨日睫毛エクステに行ったばかりだという、綺麗に手入れされた長い睫毛が小麦色の肌に影を落とす。

 彼女も、うちの秘書室にいてもなんの遜色もない美人だ。

 百七十センチを超える、メリハリのあるグラマラスなボディに、いつもしっかりと施されているメイク。

 その意志の強そうな見た目通り、世間の流行を取り入れるよりも、彼女は常に自分に似合うものを迷うことなく選べるタイプだ。
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