副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 私は、服屋さんでも迷うとマネキンが着ているものを買ってしまいがちだし、童顔な上に身長も百五十五センチほどしかない。

 同じ女性として、まるでタイプが違うかっこいい彼女に憧れていた。

 入社してすぐに彼女が落とした携帯電話を偶然拾ったことがキッカケで知り合ったけれど、あまりに生きる世界が違うように見えて、まさか彼女と意気投合して親友になるなんて最初は思いもしなかったな。

「そうだね。なんか人事の話してたみたいだったけど」

「あぁ、それ、副社長のことじゃない?」

「……副社長?」

「なによ、そのポカンとした顔。ここ最近あちこちでみんなが噂してるじゃない。ったく、情報収集が仕事みたいなものなのに、仕事に関係ない噂話には本当に疎いんだから!」

 呆れたように再び溜め息をつく彼女の足は、ピタリと止まってしまった。

 そしてすごい剣幕でこちらに詰め寄ってくると、あっという間に私を壁際に追い詰める。
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