副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 結局朝食は、副社長に言って彼が仕事の用意をしている間に作らせてもらった。

 といってもスクランブルエッグとウインナーを炒めて、少し残っていた野菜を添えただけの簡単なプレート料理だけれど。あまり時間がないから、トーストがあってよかった。

 せめてなにかしないと、お世話になるばかりじゃいけない。仮にも私、彼の秘書なのに……。

「お、いい匂いがする」

 アイランドキッチンの前にある小さめのダイニングテーブルに料理を並べていると、声を弾ませた彼がネクタイを結びながら戻ってきた。

 その髪は綺麗に纏められていて、見慣れた姿にようやく少し安堵する。

「すみません、簡単なものですが」

「十分豪華だ。冷蔵庫なにもなかったのに、ありがとう。飲み物はコーヒーでいい?」

「あ、私が――」

「大丈夫。持っていくから、先に座ってて」

 彼はそう言うと、キッチンに向かった。その後ろ姿を見つめながら、私は向かいあわせで置かれたイスの片方に恐る恐る腰掛ける。
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