副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない

「なんの問題もない。俺は、君と結婚したいと思ってるから」

　何気なく呟かれた言葉に、私は大きく目を見開いた。

「け、結婚……!?」

　驚いて声を上げる私のことなどお構いなしに、彼は平然と言葉を続ける。

「別に、君さえその気になれば早々に婚約者だと紹介してもいいと思ってる」

「そ、それは困ります！」

　思わずテーブルに手をついて立ち上がると、彼はゆっくりと私を見上げた。

　真っ直ぐにこちらを見つめるその目は優しく細められて、私の胸はまた警鐘を鳴らす。

「中途半端な思いでこんなことはしない。俺は、多分君が思っているよりも君のことが好きだ。だから安心していい。絶対に君が傷付くようなことにはさせない」

　甘く囁かれて、私はぐしゃりと顔を歪めながら崩れるようにイスに腰を落とした。

「どうして、……私なんですか？」

　彼に出会ったあの夜から、ずっと気になっていた。

　彼が、一体どうしてここまで私にこだわるのかを……。

　歩けば誰もが振り返るような彼が、これと言ってなんの取り柄もない私を好きになる理由が、いくら考えてもどうしてもわからなかった。