副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない

　髪を撫でる手が動く度に、私はギュッと唇を結ぶ。

「自分に自信がないのは悪いことじゃない。ただ暗示をかけてくれる人がいないだけだ。誰かが自分を信じてくれるというだけで、人は本来自分が持っている以上の力を発揮出来る」

　諭すように話す彼は、顔を覆う私の手を取った。

　思わず力を込めるけれど、その手は無情にも彼に絡め取られる。

　いたたまれなくて眉を下げてグシャグシャに顔を歪めた私を見た彼は、愛おしそう目を細めてこちらを見つめる。

　そのあまりに優しげな表情に、胸は一際大きく高鳴った。

「明日奈。俺が、君に魔法をかけてあげよう」

　とびきり甘く囁いた彼は、鼻先が触れ合ってしまいそうな距離まで顔を落とす。

　全身を硬直させた私は、自身の飛び出してしまいそうなほど大きく跳ねる鼓動の音を聞きながら、息も出来ずにその美しい顔を間近で見つめていた。

「自分を信じろ。誰よりも自分のために」

　ジン、と温かな波が胸に広がっていく。すると同時に降ってきた、唇への温かな感触。