口づけを、もう一度。
 私は、読書用の机に座っている楓に話しか

けることにした。

「あの~」

「ん?」

楓は、形のよい瞳をこちらに向けた。

「君、真由さん、かな? 」

ありゃっ、向こうは私の顔を覚えている。

やっぱり、私って人の顔を覚えるの苦手なのかあ。

そう思うとなんだか悔しかった。

「ええ、そうです。……実は私、楓さんのこ

と、いまいち覚えられてなくって! 

 私、人の顔を覚えるの苦手だから……。」

楓さんはくすりと笑った。

その顔はいかにも楽しそうで、こっちまで楽

しくなってしまった。

「君、面白いね! ねえ、どっかで話そう

よ。」

 意外とグイグイ来るね! 同じクラスの女子に見つかって嫉妬されたらどうしよ~。

なんて、ね。腕時計を見るとちょうど昼時

だ。時間もちょうどいいし、ついてっちゃお

う。
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