口づけを、もう一度。
 悶々と過ごしている間に、夏祭りの始まる
ときはあっという間に訪れてしまった。


浴衣を着付けるのに意外と手間取り、気づけ

ば集合時間の10分前。

 私は、藍色に花柄の付いた浴衣を着ていた

けれど、遅れたくない一心で、汚れるのもお

構いなしに走った。

 「あ!来た!」

つくと、楓はもうすでにそこに居た。

「ごめんね、ちょっと遅れた。」

「いや、いいよいいよ。ヒーローは遅れてや

ってくるものさっ。」

「私は女です」

「ん?ああ、ヒロインか。」

 楓もワクワクしているのか、何時になく冗

談を言う。

「ねえ、花火のよく見える場所があるんだ。

付いてきて。」
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