ストレイキャットの微笑



「ん? 束縛するのは嫌いだから、俺が呼んだ時に会いに来てくれればそれで良いよ。俺の寂しさを埋めてくれれば、それで」


 小さく笑って、彼が煙草を口に銜える。私はクラッチバッグからジバンシーのライターを取り出し火の出を確かめながら、この男の真意を考えていた。


「……私がそれを受けるメリットは?」


 どうぞ、と声をかけ、左手を添えながら彼の煙草に火をつけて、静かに問う。


 色恋も枕もしたことはないし、今後もするつもりはなかった。だって身体を許しても心だけは、だなんて、女の都合の良い言い訳でしょう。それに風俗はそれが本業だけれど、お水の世界にいるなら枕はどう取り繕ってもルール違反だ。


「癒しの時間を提供してあげられると思うけど」

「好きでもない男に会うより、一人で美味しいものでも食べに行った方が有意義なので結構です」


 薄い笑みを浮かべて私を覗き込むように見た橘さんに、思わず苦笑が漏れてしまった。この男、どれだけ自分に自信があるんだろうか。



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