ストレイキャットの微笑



「はは、ばっさりだね。それじゃあ……お金、でどう?」


 橘さんの瞳が獲物を狙うように細められる。その見下したような眼差しに少しカチンときた。お金は大好きだけど、金で簡単に釣れると思われているのは心外だ。私にだって矜持がある。


「そんなに安い女に見えますか?」

「そうは言ってないよ。でもこの世界にいるってことは、何かしら事情があるんでしょ。君のために、俺を利用する気はない?」


 ニヒルに持ち上げられた唇の端は明らかな挑発だ。この男、絶対に性格が悪い。


 キャバ嬢は客を手玉にとって楽しませながら売り上げを作るのが仕事だ。客に主導権があると見せ掛けながら、そのリードを決して放してはいけないと、4年もこの世界にいれば嫌と言うほど染み付いている。


 この男の言葉の真意は知らない。けれど、キャバ嬢ならばキャバ嬢らしく主導権を握ってみせろと、暗に言われているような気がした。



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