ストレイキャットの微笑



「――いくら?」

「ん?」


 グラスの氷がカランと溶ける。


 条件次第では受けても良い。好きな人も彼氏もいないし、お金が欲しいのも事実だ。だけどビジネスライクな関係だと割り切っていても、万が一の場合、女は失うものが大きすぎる。

 それに、直引きも。お店にバレたらクビのリスクもある。


 女にそれだけのことをさせるのなら、それ相応の見返りがなければ割に合わないでしょう。


「月にいくら出してくれるのかって聞いてるの」


 睨むようにして告げると、彼は水を得た魚のように微笑んで、ゆったりとした動作で手帳にボールペンを滑らせた。しれっと内ポケットから取り出されたそれはパーカーのもので、とことん精錬された感じが腹立たしい。


「――これでどう?」


 愛人契約の相場なんて知らない。けれど恐らく、彼の提示した値段は破格だ。



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