ストレイキャットの微笑
02




 愛人契約で、彼が私に求めた条件はふたつ。


 ひとつは、彼からの誘いには仕事がある時以外は必ず応じること。

 そしてもうひとつは、お互いが絶対に本気にならないこと。



 一方で、私が彼に求めた条件はひとつだけ。


 お金の絡む約束には、絶対に嘘を吐かないこと。


 もちろん他にも言ってやりたいことはたくさんあったけど、おそらくこれからもお店に通うという言葉は嘘ではないと思うし、そのあたりの細かいことは信用することにした。



「“……ということで、今日の夜会える?”」

「たぶん大丈夫です。今日はアフターないと思うので」


 待ち合わせ場所を決め、彼が電話を切ったことを確認してから通話を終える。他の客から届いている新着のメールをチェックしつつ、更衣室を出た。



< 21 / 23 >

この作品をシェア

pagetop