ストレイキャットの微笑



 待機室に戻って営業メールをぽつぽつ返していると、店長が私に声をかけてきた。


「サキ、追指入った。Aの2番」

「え? なんで」


 2番、と言われて今日その席に座っている人物を思い浮かべる。けれど私が答えを見つけるより先に、店長は嬢の名前を口にした。


「ミキのとこ。山下さん」

「あー、ミキさんかあ……」


 ミキさんの席は飲まされるから好きじゃない。

 ミキさんはボトルが下りても自分では殆ど飲まずにヘルプや新人に飲ませる。横暴な振る舞いが多い人だけど、売上持ってるから周りは何も言えないし。


 しかも山下さんって、キャストに飲ませるの好きな人だ。ああ、最悪。これは絶対標的になる。


「つぶれない程度に、売上よろしく」


 作っていたメールの送信ボタンを押してから立ち上がると、語尾に星でも付いているんじゃないかと思うくらい明るい声音で、店長は親指を立ててみせた。



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