ストレイキャットの微笑
△▽△
「あー……眠い」
お酒の酔いが回る、午後23時30分。明日から海外だという伊藤さんは1時間で帰ってしまい、待機席で眠気と戦いながら何人かの客にメールで営業をかけていると、店長が声をかけてきた。
「サキ、B5番。新規のフリー客で延長前な、期待してるから」
「え、私ですか?」
「なんとなくサキと相性良さそうだから。よろしく」
「あー……あまり期待はしないでくださいね」
けろりと笑って告げる店長に苦笑する。店長のこういった勘はピカイチで、店長が相性が良いと言うとかなりの確率で指名や延長が出る。
最近は指名のない時は常連のフリー客やヘルプばかりだったから、新規につくのは久しぶりだ。
せめてキャストを人間だと思っている客だと良い。当たり前のことだけれど、その当たり前の認識すら出来ないような人間が、この世界には山のようにいるのだ。
ふっと息を吐いて、ソファから立ち上がった。