ストレイキャットの微笑




「はじめまして、サキです。お隣失礼します」

「サキちゃん、ね。橘です。よろしく」


 第一印象は、笑顔が胡散臭い男。顔かたちは甘く整っているけれど、纏う雰囲気がちぐはぐしていて掴めない。


「よろしくお願いします」


 両手で名刺を差し出すと、彼と指先が触れ合って、目を合わせた彼がふっと淡く微笑んだ。きっとこの男は、それを女が自分に見惚れることを分かっていてやっている。だから余計に質が悪い。


 思い通りになるのは癪だから、彼のブラウンの瞳を真っ直ぐに見つめてゆるりと微笑んでやった。そして何事もなかったように、中身の減っているグラスに目をやる。これくらいのことでいちいちときめいていたら、キャバ嬢なんてやっていられないでしょう。


「お作りしてよろしいですか?」

「ああ、うん。ロックで作ってくれる?」

「分かりました」


 グラスにアイスを移しながらドリンクを頼むタイミングを見計らっていると、彼の方から声をかけてくれた。



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