ストレイキャットの微笑
「サキちゃんも好きなの飲んで良いよ」
「わあ、ありがとうございます。じゃあキティ、頂きます」
お願いします、と黒服を呼んでドリンクを頼むと、ウイスキーをひと口飲んだ彼がサキちゃん、と私を呼ぶ。
「何かつまむもの欲しいし、フルーツ盛りでも頼もうか」
いきなりフル盛り。メロンやらマスカットやらが乗っているそれは、見た目も華やかな分やたらと高い。そのお値段、なんと12000円。
いつも思うけど、フル盛りってなんでこんなに高いんだろう。キャバクラ価格は恐ろしい。正直見た目ばっかりが豪華なだけで、値段と中身は全く釣り合っていない。まあこれは、夜の店なら何でも当てはまってしまうのだろうけれど。
「本当? 嬉しい」
いくら売り上げが欲しくても、さすがに私は初めての客にフルーツ盛りを強請ったりはしない。けれど頼んでくれるというなら有り難く頂きます。