天使と悪魔の子

昨日は夕飯を抜いてしまった。

宙は気まずいのか家にはいないようだ。

その代わりに家の外には夕紀くんが待っていた。

『…おはよう』

「…」

夕紀くんは相変わらず無言で私の前を歩いた。

「香水、ちゃんと付けてるみたいだな。」

『うん』

また沈黙

でも彼との沈黙は、とても心地がいい。

「私また彼を傷つけちゃったみたい。」

「…それは、あんたが悪いの?」

違う

でもきっと私が悪い

本当は、どちらも悪くないんだ。

「それなら宙は、自分を悪いと思ってる。」

『なんで…?』

「あいつも、あんたと同じ気持ちだから。」

宙も私と同じ?

後ろめたくて、どうしようもなくて…苦しい。

『うん、帰ったらちゃんと話し合ってみる。』

「あぁ」

夕紀くんは欠伸をしてまた道を歩いていく。

何気なく、いつも、助けて貰っている。

『夕紀くん、ありがとう。』

「……なにが」

照れくさいのか振り返らずに歩いている彼を見て、少し笑った。

「夕紀くんっていうの」

『ん?』

「なんかこそばゆいからやめてくんない。」

『…うん!』

なんだか夕紀くんに認められた気がして、凄く胸が弾んだ。

『夕紀』

「……やっぱいい」

『ぇ』

「行くぞ」

『ぁ、待ってよ。』

早足になる彼を急いで追いかける。

足が長いから大変だ。

「…」

それに気付いたのか、彼は速度を落としてくれる。

夕紀には叶わないな。

なんて思いながら、私は前を向いた。


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