天使と悪魔の子
「私は…私はあんたみたいな元から美人で男にチヤホヤされるような女が一番嫌い。」
自分が美人だというのはなんとなく自覚している。
それはナルシストとかではなく周りの対応を見ていたら自然とわかってしまうものだ。
そのせいで私は昔から祖母に嫉妬をされていたのだから。
『愛される人間と愛されない人間。』
「は?」
『どんな容姿をしていようと、好かれる人間はいる。そう、それはまさに天性ね。』
容姿はいいんだけど
例えば日和や架とか
そんな誰でも包込めちゃうような
太陽みたいな人
でも彼らも私達とおなじように辛いこともあった。
『愛される人は、一生懸命な人だったり、なにかに熱中できる人なんじゃないかな。上辺ならいくらでもいるけど、本当に周りか愛される人間はあまりいないでしょ?』
「……愛される、人」
『私は残念ながら、愛される人にはなれなかった。長い間、全てを諦めてしまっていたから。』
周りに裏切られるのが怖くて、友だちも作れなかった。
あの弱い私
「…愛される人間ほど残酷なものはないですよ。」
理江ちゃんはすっかりやる気をなくしたのか隣の隣のブランコに座った。
「最初は、気になっている程度だったんです。」
虚ろな目で地面を見ながら理江ちゃんは口を開いた。
「中学生の頃、たまたま隣の席になった人に恋をしました。容姿はそこそこ、スポーツも運動もできるクラスの頼れる存在でした。…でも、知らない間に彼の隣には誰から見ても可愛い女の子が並んでたんです。
私はいじめられっ子で容姿について酷い言われようでした。その男の子は私にも分け隔てなくしてくれる救いの存在だった……けど彼も本当は陰で笑ってたんです。
その時気付きました。
全ては見た目なのだと。
かっこいい男の子には必ず可愛い女の子が隣にいて、可愛い女の子は無条件でチヤホヤされる。」
理江ちゃんは深い溜息をついた。
だから彼女は見た目のいい同性を妬んでいるのか。
でも、彼女の容姿は十分可愛いし悩む必要なんてなかったはずだ。
容姿で虐められたとはとても思えない。
「だから私は、顔を変えたんです。
高校に入る前田舎から越してきて誰も知らないここにきて一からスタートするつもりでした。
でも、なんでだろ……同級生の気になった子に告白されても、あんまり嬉しくないんです。」
思わずぎょっとした。
理江ちゃんの顔を見ると、頬に涙が伝っていた。
彼女はもっと自分勝手だと思い込んでいた。
でも本当は違ったんだ。
「その好きは、本当の好きじゃないと、疑ってしまうんです。顔がいいから?私を好きなのかって。
何がしたかったのか自分でも分からなくなりました。とりあえず自分を認めて欲しくて、可愛いと思って欲しくて格好良い男の人に近付きました。
全部全部八つ当たりだったんです。」
八つ当たりだった
この社会の理不尽な優劣への反抗だった。
そう彼女は語った。
とても憐れで、悲しい。
同情されるのは苦痛だ。
でもそうせずにはいられない。
『理江ちゃん』
私は今までの父との過去を話した。
そうしなければならない
すべてをさらけ出さなければならない
直感でそう思った。
真実をお互いに打ち明けた時
貴女と、わかり合える気がしたの。