天使と悪魔の子

翌日、彼女はバイトをやめることになった。

染めていた髪を戻して、変な口調もやめた。

あまりの彼女の変わりっぷりに一番驚いたのはきっと光希先輩だろう。

一昨日以来彼とは同じバイト先なのにも関わらず出会っていない。

気まずいなにかが、私達の間にある。

「先輩、先日はありがとうございました。」

丁寧に腰を折る彼女はとても清楚で爽やかだった。

なんとなく、彼女はもう大丈夫な気がする。

『ううん、こちらこそありがとう。』

「……あの、よければ、昨日のお誘い受けてもいいですか?」

私は一瞬時間がここだけ動いているかのように感じた。

口元が自然に緩むのをなんとか抑えて彼女に視線を送る。

『“また”』

この“また”は口約束の“また”ではない。

彼女と出かける時まで、暫しの別れの挨拶だ。

「今度会う時は、理江って呼んでくださいね。」

『じゃあ今度会った時、敬語と先輩っていうのやめてね。』

この会話がなんだか不自然で、お互いの顔を見て笑った。

「“また”」

彼女が歩き出す。

私は彼女の幸福を静かに祈った。

今度会った時

友達以上の関係になるような

そんな気がした。


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