天使と悪魔の子

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翌日の昼休み

私は宙の隣でお弁当を食べるのが気まずくて屋上に来ていた。

『さすがに、冷えるね…。』

この季節、わざわざ屋上で食べる人はいない。

私は安心してお弁当箱を広げた。

ん…安心ってなんだっけ。

ーガチャ

『え…』

誰か、来たの?

近付いてくる足音に耳をすませる。

「逢沢さん」

綺麗な重低音が聴こえる。

それが私を呼んでいることに気付くのに数秒かかった。

『宙くん…』

「一緒に食べていい?」

嫌とは言えないよね。

『……うん』

「ありがとう」

眩しいくらいの笑顔を浮かべて私の隣に座り込んだ。

「逢沢さん、逢沢さん。」

昨日のことを思い出してぼーっと空を見上げる。

「逢沢さん?」

冷えるなぁ

「美影」

『…え?』

「やっと気付いた!」

美影(ミカゲ)って、呼んだ?

『私の名前…』

「え?君、逢沢美影ちゃんでしょ?」

『あ…ううん、名前を呼ばれるの久しぶりだったから。』

今まで、苗字しか名乗って無かったし…

「綺麗な名前だよね。美しい影って、きっと月を連想したのかな?」

『……そう、かもね。』

親の考えることなんて、考えたこともなかった。

それに、あんまり美影って、好きじゃなかったし。

「美影って、よんでいい?」

『……いいよ。』

だから、お願いだから。

その綺麗な目に汚い私を映さないで。

「やった!
じゃあ、俺のこと宙って言ってね。」

『…わかったよ』

下から吹き上げる風が胸までの髪を浮かせる。

同時に寒気がして膝を抱えた。

「寒い?」

『寒い』

そういうと宙は私の方へ身を寄せてきた。

会って二日目なのに、よく体を寄せられるなと彼の動向を伺う。

「なんで、目を見てくれないの?」

『……見てるよ』

「見てないよ」

宙が私と目を合わせようと顔を覗き込んでくる。

それから逃れるように横を向いた。

『ほら、俺から逃げてる。』


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