天使と悪魔の子
「もう……いいや」
その言葉に、酷く揺さぶられた。
見放されたような
突き放されたような
どちらにしろ、良い方へは傾いてくれない。
「伊織を連れて帰ってきて。
私が行っても、邪魔なんだよね。」
そう言って背を向けた彼女、
架もなにも言わなかった。
夕紀や宙はこの事態を予期でもしていたのか諦めたような、そんな顔をしていた。
普通の小説なら
こういう場面で仲間と手を取り合い悪い奴らを倒すのだろう。
でも現実はそうはいかないのだ。
突然の出来事に頭が痛くなった。
日和
そう声を掛けることも出来ない空気。
もう再び、心からの笑顔で受け入れてもらえないかもしれない。
あのお泊まりの日のような幸せは、もう来ないかもしれない。
5人で肩を並べてお弁当を食べることもなくなるのかもしれない。
一度出た不安は、もう留まらない。
息がしづらい
時間がゆっくり進む
ここで泣くことは許されない。
赤赤しい空を見上げ目を閉じた。
日和達を守る為に
私は心を殺そう。
「さようなら」
小さな声で別れを告げる。
彼女達が振り向いた時には私達はもういない。
もう誰も、傷付けたくない。
それでも宙の胸で空を舞いながらどうしても
どうしても
涙が止まらなかった。