天使と悪魔の子

「俺を見てよ。」

『…やだ。』

「なんで?」

『言わない。』

「じゃあ、見てよ。」

めちゃくちゃだ。

なんでこんなことになったんだろう。

「ねぇ」

『…』

「美影っ」

『怖いのっ!!』

気付いた時には言葉を放っていた。

そして、同時に彼の目を見てしまった。

一度見ると逸らせない綺麗な空色。

それから逃げたくて立ち上がる。

「何が、怖いの…?」

『そ、それは…』

彼も立ち上がってめげずに話しかけてくる。

ゆっくりと後ずさりをしていくとトンと腰に柵が当たった。

この人、凄い頑固だ。

顔と顔とが近くて思わず後ろに体の仰け反った。

『宙の目が綺麗で、そこに汚い私が映るのは全部見透かされてるみたいで…怖い。』

突如、私の身体が宙に浮いた。

いや、正確には屋上から落ちた。

『もう、いいや。』

やっと、おばあちゃんの所へ行ける。

そっと目を閉じたその時、鳥が羽ばたく音が聴こえた。

「死なせない。」

急降下する感覚がなくなって、何故か宙に浮いている。

そっと目を開けると、有り得ないものが見えた。

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