天使と悪魔の子
『リューク、アラン!』
私の声にふたりは振り返った。
そして固まる。
当然だろう
私の隣には元大天使の大罪人がいるのだから。
「リーフ様?」
夕紀が目を丸くして片膝を地につき頭を下げた。
「うーん、僕達は複雑な立場だからな。
僕が光で君は影、君は影で僕は光。」
堕天使と昇悪魔の例えだろうか。
天使側の立場から見てもリーフは堕天使でも元大天使だし、悪魔の立場から見ても森の支配者という立場が主張するようにかなりの権力を持っていることが伺える。
彼曰く
森は魔界の全ての彷徨う魂やそれを吸収しようとするザヘルが集まるそうだ。
ザヘルの成長を無慈悲に止めるのが彼の役目だ。
『難しい話は置いといて、直ぐに森を抜けて伊織を探すよ。』
「いや、けど……」
「僕は今日から彼女の使い魔になることにしたからね。よろしくね、ふたりとも。」
「「はい」」
珍しく緊張しているのか二人は背筋を伸ばした。
エルはつまらなそうに私たちの先頭を歩く。
なんて堂々たる飼い猫……。
「じゃ、迷いの森を抜けよう。」
リーフが指を鳴らすと一気に森は動いた。
正確には地面が私達を運び木々が回って見えただけなのだが。
『リーフはどうして私達の味方をしてくれるの?』
「……君にはそれほどの価値があると思ったからさ。」
『これって反逆なのよ。』
「僕は元からどっちの味方でもない。ただ、答えを探しているんだよ。」
リーフは意味深な言葉を淡々と発して先を見据えていた。
じゃあ私達の味方でもないってことだよね?
そんなことは問えなかった。