天使と悪魔の子

『……二階にはいなさそう?』

「うん、三階へ行こうか。」

「誘導されているような気もするがな。」

夕紀はシレッと怖いことを言う。

まぁでも、彼らが私達を魔界へ呼んだのだからそのくらい当たり前だろう。

『……』

三階へ進むと大きな扉があった。

私達を待っていたような、そんな堂々とした扉。

ーギィイイイイ

中を見るととても煌びやかな絵画が沢山あった。

でも少し、不気味だ。

絵は魔王やその部下達の絵が多く、中には神を否定するような絵があった。

そうか、人間と変わらない。

天井が高く綺麗な通路を抜けるとさらに階段があり、またそれを上る。

少しずつ鼓動が早くなるのを感じた。

今度は二階のような普通の廊下だ。

ゆっくりレッドカーペットを進む。

ーコッコッコッ

ヒールの音がカーペットに吸収される音は、まるで今の心臓の音のよう。

「パーティーは楽しんでいただけましたか?」

『っ!』

いきなり話しかけられて肩が跳ねた。

宙は警戒しているのか私を後ろへ隠す。

私より少し背の低く大きい赤黒い瞳、幼さの混じった可愛らしさの中に秘められる狂気ともいえる力。

瑠璃

「なにも、今は襲いませんよ。下ではパーティーが開かれているんですよ?ついてきてください。」

「……」

自然と前にいる宙のタキシードの袖を掴んだ。

大丈夫

そういうように彼は笑いかけてくれる。

そうじゃない

そうじゃないんだよ

もし宙達に何かあったらと思うと、気が気じゃなくなる。

そんな心配をよそに、逞しく背中を見せて歩き出すふたり。

少し気を抜いたら涙が出そうで、袖を離して目元を覆った。

彼らがじゃない

私が守ってみせる。

伊織ちゃんも、絶対に取り戻してみせる。

やっぱり宙と私は似ているのかもしれない。

自分を犠牲にしてでも、皆を守りたい。

そう心から思った。

そんなこと

誰も喜ばないって知っているのに……。


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