天使と悪魔の子
2節 “鳥”
俺は、いつになってもこうだ。
ごつごつした自分の手を見て、あの小さなか弱い手を思い出す。
先程頬に触れた温もりがいつまでも離れない。
“さよなら”
彼女はそう言って姿を消した。
俺達の為に。
「くそっ」
石の壁を思いっきり殴るとそれは破壊され、そして手には血が滲む。
“好きだよ。”
頭の中でぐるぐると彼女の声が再生される。
君は残酷だ。
俺にするなと言ったのに、自分を犠牲にした。
「宙……」
夕紀が心配そうに俺の顔をみた。
その腕の中には、小さく息をする日和の妹がいる。
「彼女を届けよう。」
それが美影の一番の望みだ。
第一、今奴らを追いかけても何も出来ないに決まっている。
俺達は先程奴らがしたように、ベランダから飛び降りた。
ーガサッ
「まぁ、こうなるって思ってたよ。」
氷よりも冷たい目で、俺たちを見ているリーフとエル。
どうしようもなかった
なんてただの言い訳にしかならない。
「その子を届けてきなよ。僕が森でお前達を強くしてあげる。」
驚いた
まさかそんなことを彼が言うなんて思いもしなかった。
何が狙いなのかは全くわからない。
でも、強くなれるなら……
「「了解しました。」」
悪魔のような天使に従うしかなさそうだ。
天使を“喰らった”大罪人に……。