天使と悪魔の子
「どこに行くんだよ」
ふと声を掛けられて振り返る。
声の主は、やはり架だった。
「……」
「また、逃げんのか。」
どんどんと近づいてきて俺の胸グラを掴む。
「お前、男として好きなやつのこと泣かせてんじゃねぇぞ。」
泣かせる
俺は何度も彼女に酷いことをしてしまった。
残酷なキスは
さっき仕返しされたけど。
「日和のことは、俺がなんとかする。だけど、お前らが最後に笑いかけてやれよ。それが、償いってやつだろ。」
架はそう言って笑った。
あぁ、架って本当…
「ありがとう」
最高の友だちだ。
何があっても、俺達を見捨てないでくれる。
「夕紀、お前も後悔すんなよ。」
「……あぁ」
こんなに幸せものでいいんだろうか。
そう大きく叫びたい。
「じゃあまた、俺ん家にも遊びに来いよ。」
「「また」」
声を揃えてお互いに背を向けた。
もう大丈夫、美影、大丈夫だ。
そういって抱き締めてやりたい。
日が昇りかけ、それが完全に昇りきるまでには俺達はもうここにはいない。
昨日の出来事が、席替え、お弁当全てがもう遠い日の思い出。
俺が転校した日の全てに絶望し怯えていた君は今日俺たちから巣立ち必死に上を向いている。
今だってきっと、闘ってる。
あの小さな背中を追いかけて、俺達はあの森へ向かった。