天使と悪魔の子

リーフが歩いて話を始めるからとりあえずついていく。

「ついさっきまで、ここには普通の日常があったんだ。少なくとも彼女は嫌な思いをすることはなかった。君もわかるだろう?」

「まぁ…」

レリアス

少し歪んでしまった俺の愛すべき弟。

レリアスが身寄りのない者達を集めているのは知っていた。

それは尊敬すべきところ。

たまに恐ろしいほど冷たくなるが、その分優しいところもある。

そんな憎めない奴なんだ。

今まで美影にいろいろ酷いことをしたのは、多分俺のせいだから……。

「まぁとにかく、彼女は結構逞しいってことだよね。で、今日起こった出来事っていうのはご存知の通り襲撃だ。レリアスは彼女を魔王に渡すつもりはなかった。そこで、ある一人の人物がここを王に命じられ襲撃することになった。」

「……うん」

「その人物は君と関係がある。」

「王直属騎士団団長……ラミア」

魔界でもトップクラスの戦闘能力

天界で言う大天使並の超実力者。

俺の兄

「……深刻だな」

美影の存在がバレてるだけじゃない。

一番最悪なのはそんな俺の兄、ラミアが美影達を追っている、もしくは捕まっていること。

「いい知らせと悪い知らせ、どっちから聴きたい?」

リーフがとある一室に立ち止まり振り返った。

「悪い知らせ……かな」

「レリアスはラミアに捕まった。」

異母兄弟でも兄弟は兄弟

レリアスがラミアに捕まったなんて…

聴きたくもない兄弟喧嘩

「いい知らせはなんだ」

少しイラつきながら夕紀は腕を組む。

「美影は無事脱走に成功したよ。しかも最強の助っ人付きさ。」

ーガチャッ

リーフが部屋の扉を開けると、中には大きく開かれた隠し扉がある。

ここから逃げたのだろう。

「最強の助っ人?」

「君のお姉さんさ、あとレリアスのシェフ付きね。」

「姉さん……?ミリーナが付いてるってこと?」

ミリーナが美影についてくれているなら少しの間は大丈夫そうだ。

正直、レリアスよりも格段に強いからな。

俺でも小さい頃は軽く叩かれただけで軽く泣きかけたくらいだ。

ただ、ラミアもその上を行くから長くはもたない。

「ここから逃げたみたいだ。」

「レリアスは美影を庇ったのか……」

夕紀は複雑そうな表情を浮かべた。

「君達はここから美影を追ったらいいよ。
僕とエルは少し別の方法で探してみる。僕の魔力じゃ周りを驚かせてしまいそうだしね。」

ーミィ

エルの鳴き声が聞こえた時には、もうそこにはいなかった。

残された俺と夕紀は顔を見合わせ鏡を見る。

「逃げるなら今だよ」

「ここまで来たんだ、お前を一人にするかよ。」

「そうか」

俺はどこまでも仲間思いな大親友、いやそんな言葉では表せないかな。

それほど素晴らしい友に笑いかけた。

美影、君は今どうしていますか?
< 134 / 262 >

この作品をシェア

pagetop