天使と悪魔の子
もの多立てずにシェリーが野菜を切っていく。
手が早すぎて目では追えない。
それを見て男は口笛をひと吹き。
「おぉ、すげえな」
「出来ました。」
すました顔で顔を留めているピンを外す。
その顔はどんな時よりも活き活きしている。
「うめぇな」
男はしみじみと頷いている。
『名前はなんて言うんですか?』
「名前?別に教えるほどのもんじゃねぇよ。」
男は料理をあっという間に平らげると寝床へ向かった。
「……」
ミリーナは何故か口を開けたまま固まっている。
「……あなた、どこかで見たことがあると思ったら……まさか」
「やめとけ嬢ちゃん、それ以上のお喋りはなしだ。とっとと寝て出て行ってくれ。」
ミリーナさんは口を閉じてそれから話さなかった。
ふたりの間に一体何があるって言うのだろう、
「美影様もおやすみください。今日は疲れていることでしょう。」
シェリーがどこからともなく毛布を持ってきて私に掛けてくれた。
『ありがとう』
だんだんと瞼は重たくなって、いつの間にか眠ってしまった。