天使と悪魔の子
カバンからどんどんと机にノートと教科書を積み上げる。
勿論、授業が始まっても私みたいに机に用具を置く者は少ない。
年寄り先生のか弱い声が五月蝿い生徒達の声に掻き消されるのを聞きながらぼーっとしていると、前の席の男子がいきなり振り返ってきた。
「逢沢さん!」
『え、な、なに。』
彼とは何度か話してはいたが、全て事務的にというか、行事とかに用事があって話しかけていた。
でも、授業中に話し掛けられることは無かったから思わず声が上ずる。
前の席は金髪に黒メッシュのクラスの人気者で不良と言われればそうなのだがとても優しい男の子だ。
そんな彼の名は東洞架(トウドウカケル)。
私とは正反対の人だ。
「あのさ…その、もうすぐクリスマスだろ?
パーティとかしようって友だちといってるんだけどよかったら逢沢さんもこない?」
思いもよらない言葉に思考が停止した。
私と遊びたいっていう人、いるんだ。
「いや…かな?」
『そんなんじゃないよ…』
「そう?よかった!!
じゃあ一条もこない??」
『はっ!?』
大声を出してしまって口を抑えた。
東洞くんも目を丸くしている。
頬が熱くなるのをどうにか抑えながら脳をフルに働かせた。
宙と一緒に?
いや、無理だ。
さっき感じ悪く突き放したところなのに…
宙の方をちらりと向くと彼は嬉しそうに頷いて私を見た。
「行く」
「よっしゃ!!じゃあ決まりだなっ。」
よっしゃじゃ、ない。
私は頭が痛くなって机に突っ伏した。
『なんなの…』
宙は一体、何者で、私の何を知ってるの。
なんで私に笑いかけるの。
もう関わりたくないのに。