天使と悪魔の子
ーカチャカチャカチャ
今度は本当に牢屋入り、かと思えば通されたのは窓のない客間だった。
まぁ、一応牢屋らしい。
入口付近は檻のようになっていて内側からは扉に近づくことさえできない。
豪華な動物園の檻みたいなそんな仕様だ。
壁にはレリアスが繋がれていて酷く衰弱していた。
『レリアスっ』
急いで駆け寄ると彼は驚いているのか目を見開いた。
「捕まっ、たのか」
『ごめんなさい…せっかく逃がしてくれたのに。』
「いや、予想以上にラミアの勢力が強かったんだな。」
『ミリーナさんに想い人がいることが騎士団に漏れていて待ち伏せされたのかも。』
後々考えても意味はない
でも何もないこの部屋は、なにかを考えずにはいられないほど静かで無機質だった。
「あいつらといた方が、安全だったかもしれない。」
え……?
「王国騎士は人間界に乗り込む準備を進めていた。美影には人間界に、大切な人がいる。」
『……まさか』
レリアス、貴方って本当に不器用だ。
そういうところが宙と似ている。
『わざと自分が悪者になって、日和や架を守ってくれたの?』
「……」
レリアスの治療能力が追いついていない肌に触れた。
傷だらけだ
最初からこうなることを知っていて……
『ありがとうっ…』
日和や架を守ってくれてありがとう。
「何の話だよ」
そういって目を逸らす彼
そんな時、大きく扉が開き檻が開かれた。
ードサッ
ごみのように放られ床に転がる。
そしてまた鍵を檻にかけて扉にもかけられた。
静まり返った部屋
放られた人物
『ミリーナさんっ』
「美影…ちゃ…レリアスごめんなさい、もう少し粘るつもりだったのに……。」
「いや、ラミアの動きが早すぎるだけだ。」
ミリーナさんの綺麗な肌に少し傷がついている。
一体、レリアスといいミリーナさんといい何をされていたのだろう。
シェラールさんやシェリー、ルリは大丈夫なのだろうか。
「大丈夫、絶対に魔王に渡したりなんかしない。」
ミリーナさんが疲れているのか体も起こさずに笑いかけてくれる。
「勝負は明後日よ」
「魔王の誕生祭か……」
なるほど、そこで私を王に献上するということか。
この部屋を出れるのはその時、一か八かの逃亡作戦というわけだ。
ーガチャガチャガチャ
再び部屋のドアが開かれて一人の騎士が私を指さして檻の外へ呼ぶ。
そして手錠をされて部屋を出された。
「ラミア様がお呼びだ。」
騎士のあとをついていくと一室に通された。
大きな広間のような場所には何も置かれておらず、ただ広い空間が広がっている。
窓際は全てガラスになっていて幻想的な赤い空や煌びやかな王都が見えた。
さすが王都、といっていいのか空には大きな羽根を持った黒いドラゴン達が空を飛んでいる。
「来たね」
振り返った悪魔は甘いマスクを被ったまま、優美に微笑んだ。